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『道路の権力』 [書籍:『』「」付記]

道路の権力

道路の権力

  • 作者: 猪瀬 直樹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/03/10
  • メディア: 文庫

郵政もメディアにあまりでなくなって久しいですが、もっと久しいのが道路です。あ、道路特定財源の話が出てくることがあるか。

日本政治最大の問題の一つであることに間違いない「道路」。

本書は道路公団民営化委員会にもなって道路利権に立ち向かった猪瀬さん視点の記録というべきものだと思います。文庫版になったので買ってみました。今からあの頃を思い出しながら見ると面白いのかな、と思いました。

もう書評も結構書かれているみたいですが、賛否両論ありますが、どうも読み手の道路公団改革の成果に対する認識がそのままこの本の評価になっていることが多いみたいです。特に否定的意見を感じる方に。この本はそれだけの視点で評価されるべきものではないだろう、と感じました。

僕には道路公団改革の是非、民営化委員会の答申とか、そういうのに評価を下すことはできません。理由は2点あって、1つは道路行政のことがよく、というか殆どわからないことです。マスコミが道路公団を批判してるのは知ってますし、道路政治の実態はひどい、ということは分かります。おそらくですが、道路政治の改革は必要なのだと思います。しかし、どうすべきかはよく分かりません。

2つ目は改革は一日にして成らずということで、改革はするにしても時間がかかります。だから今の段階で、この案(それが良いか悪いかは別として)は成功してないとかいえないと思うのです。それに成熟した社会での政策というのは色々な関与者を経た上で実現されることになります。当然、はじめの原案に対して色々な過程で介入があるものだと思います。そして原案が途中で介入されたことをもってはじめに案を書いた人にたいして批判をするのはフェアではないように思うのです。

そして未だ道路の改革は道半ばです。未来が見えないので色々な評価が出るのは仕方ないでしょう。今の段階での評価というのは、所詮ものの見方に左右されるのだと思います。

一歩前進したことについて、「今まで踏み出せなかった一歩を踏み出した」と評価するのか、「まだまだ手ぬるい」「妥協の産物」「骨抜き」と評価するのか、人それぞれでしょう。

成功か成功でないかは、これからにかかっています。マスコミ、そして僕達の問題は物事の一番盛り上がるところしか見ないということではないかと思います。しかし大事なのははじめの案がどのように実現されていくのか、あるいはされていないのか、までもちゃんと見つめる姿勢だと思います。

 

さて、それはともかくとして本書には評価されるべき点があります。

僕が一番評価するべきと思ったのは、猪瀬さんが道路公団の民営化案を作成する過程を詳しく記述している点で、(猪瀬さんの主観が入っていますが)日本という国で何か物事を変えようとすることがどれだけ難しいか、ということを明らかにしている点だと思います。

道路はまさにその典型例、色々な利権が網の目のように張り巡らされており、一つ動かすだけでどこからか必ず反発が起こります。既得権益を持つものがあらゆる手を使って改革を阻止しようとします。

難しいのは彼らは自らの正義を信じている点であり、更に悪いことに彼らの正義は決して間違っている、とはいえない点です。「国土の均衡ある発展のためにはインフラたる道路は不可欠」というのは別に悪いことではありません。現実には「必ず正しい」という一つの解はありません。色々な正義を実現しなくてはならない。有名な政治学者が「政治とは妥協である」というのは現実の一側面を絶妙に捉えたものであると思います。

更に難しいのは、改革を実現するものは常に少数で戦わなくてはならない、ということです。小泉さんへの国民の支持は高いですが、だからといって現実の政策実現を手伝ってくれるわけではありません。それに引き換え、改革に立ちはだかるのは官僚です。官僚は一人ではありません。組織です。表現は悪いですが、頭を幾らつぶしても死なないのです。うまく組織が機能しているときは良いのですが、腐敗した、硬直した官僚組織というのは最悪ですし、戦わなくてはいけないときには、とてつもなく手ごわい組織です。また組織であるがゆえに誰と叩けばいいのか分かりません。そして一人ひとりは「いい人」が多いのです。

官僚はその分野のエキスパートです。その知識量は半端ではありません。

また、国に関する情報を独占しています。公開されているものも多いですが、秘匿されているものも多いです。

加えて外部の人間には閉鎖的な側面がある、ということもいえると思います。人間誰しも今まで一緒にやってきた仲間とそうでない人には区別をしてしまうものです。

そして腐敗しています。「腐敗しない権力はない」という言葉を実証したわけではないですが、そういうものなのだと思います。

本書で明確に語られているわけではないですが、僕が問題として考えたいのは、最終的に政策を実現するのは官僚以外ありえない、ということです。政策の執行は「行政」が行うのです。そうするといかに官僚を戦おうとも実現段階は官僚がするしかないわけで、ここに官僚が受け入れない案が骨抜きにされてしまいかねない危険性があります。

もちろん監視することはできるでしょうが、膨大な行政全てを監視することはできません。どこかにほころびは生まれるのでしょう。

 

猪瀬さんたち7人の民営化委員の人たちの最大の敵(全ての委員が敵と思っていわけではないでしょうが)はこうした官僚あったといえます。その中で猪瀬さんが民間人でありながら頑張っていることはとても評価できます(はじめに述べたように中身の当否は別として)。

委員会の事務方も官僚とか道路公団の人で、情報の公開とかに非協力的です。出せといっても中々出しません。そして微妙な嫌がらせが多くあります(猪瀬さん視点ですが。猪瀬さんの主観的なところを無視して、事実だけ見ても、書かれている事実がうそでないという前提ですが、ひどいですね。)。粘り強く情報の提供を要請し、情報を出させるようにする。忍耐が要る作業です。

 

それと関連して評価するべきは、猪瀬さんのfacts finding、事実調査というのが大変しっかりしている点です。観念論ではなくミクロの事実をよく分析しています。役人顔負けだったと思います。そしてしっかりした事実の調査を基にして、論理的に官僚、道路公団の職員に詰め寄るのは圧巻ですね。数字をよく調べて、ここの数字は何故こうなるんだ、と問い詰めていく。答えを聞きながら、どさくさにまぎれて議論をずらされていないか、どこをごまかされたのか、ということのチェックをつぶさに行う。本書を見れば猪瀬さんがどこまで突き詰めて議論を行っているのかがわかります。(官僚はごまかすのはうまいですから)

 

論理と事実についての正確かつ緻密な知識、改革を行おうとす者の大きな武器がどのように使われたか、本書はそれを見るための良い教科書になるのではないかと思います。

そこで更に思うのが、それでも尚改革を行うことを難しさです。ここまでやっても玉虫色の表現を使わざるを得ない、抜本的な改革、革命はできないのです。

 

逆に本書にも残念なところがあります。自分の思うことが書いているのは良いですが、文章に主観が入りすぎています。道路公団改革、という重要な問題の、しかも改革にたずさわった人の記録なのですから、もっと客観的な記述にして欲しかったです。そのほうが如何に改革が難しいのか、などの問題を構成に伝えるのに良いように思います。その分読みにくいだろうけど。

どこまでが猪瀬さんの主観なのかがいまいちはっきりしないので、第一級の資料と成りえないのかなぁ、と感じていしまいます。

その意味では悪口も良くないですね。

僕は猪瀬さんのそういうところはどうも・・・。TVとか見てても、喋り方が悪いのか、人を見下した感があります。もう少し大人になられたほうが・・・。

でもこういう人だから、エネルギーがあるのかな?性格のいい人はエネルギーが無くて、改革とかに向かないですから。

 

そういえば『道路の決着』なる本を出すそうです。頑張ってください。


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